#49 ハイスクールのアレを終えて (前編)

ある夜、友人の女優(巨乳・人妻)からメールが届いた。

「ひでとも、高校生と芝居やるの興味ない?」

詳しく話しを聞くと、彼女(巨乳・人妻)の母校である高校の国語のカト先生が、

夏目漱石の「こころ」を生徒たちの手で台本に起こし、

授業内で上演するという。

そこに台本に書かれていない役として乱入してくれないか、との事。


「ちょっとイメージがまだわいてないから、一度その先生と会って話しを聞きたいってばよ!!」とぼくはナルト調で言った。


冬の寒い日にぼくと彼女(巨乳・人妻)は、カト先生と3人で食事をする事になった。

カト先生は白髪の短髪で、メガネの奥には少年のような瞳を宿しており、

横に大きな口や、笑うと線になる目、清潔感のあるコートに身を包み、矍鑠という言葉がよく似合っていた。良い年齢の重ね方のお手本のような、教員の一つの理想の姿を体現されているようにぼくは感じた。(今年で退職なさるとのこと)。

そして、何よりもお喋りがとても好きなようだった。

マシンガントークと形容するのも生ぬるいほどに言葉の洪水をぼくらに浴びせてくる。

どこで息継ぎしているのかもわからない、いや息継ぎなど最初からしていないのかもしれない。吸う時に喋り、吐く時にまた喋るのだ。ぼくはこれをカトトークとこっそり名付けた。

カト先生が予約してくださった喫茶店では、そのお店の女性オーナーとの出会いや、ご自身が大病を患われた時のお話し、教育に関しての思想哲学などありとあらゆる分野のお話しをしてくださった。

注文したホットティーも、カトトーク後に口に含むとすっかり冷めていた。

教育という事に関して熱をお持ちである事に疑いの余地はなかった。

ぼくは尋ねた。


「お話しをいただいたのはありがたいのですが、なぜこういう事をやろうと思われたんでしょうか?」

「社会に出れば想定外の事なんて起きて当たり前ですよね?想定通りに事が動く事の方が少ない。「こころ」を台本にした高校生たちは、その台本の通りに演じようとします。そこに乱入してかき乱してほしいんです。台本に書かれてない想定外の事なんて社会に出れば目の当たりにするのだから、それに対応できる能力をつけさせてあげたいんです。」


好感を持つなという方が無理である。

この人は間違いなくプロフェッショナルだと感じたぼくは、提示されたギャラだけ見れば興味を強くは持てなかったものの、それを補って余りあるものを感じ、この仕事を引き受ける事にした。

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日本のインプロバイザー・長澤英知の公式HP。 インプロ / 俳優 / MC / ナレーターなどの活動を行う。

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