#42 アニマル(続き)
(続き)
600円を支払い、大人の入場券を購入して中へ入る。
たった600円なんて、ウサギさんの餌代にもならないだろうに…。
「1人で来てしまってごめんなさい。」
エセ浮浪者は心の中で詫びた。
今回、この動物園へ来たのはゾウを見るためであった。入り口で入手したパンフレットの地図に従い、アフリカゾーンへと歩を進める。
なるほど、でかいと聞いていたが確かにでかい。広い。そして、臭くない・・・!
香りソムリエの長澤もこれには面食らった。
刀を持たない侍、愛を持たない忌野清志郎、臭くない動物園。
三大アリエナイの一つが覆された記念すべき日となった。
一歩歩くたびに深呼吸をしながら進む。途中で通過するフラミンゴコーナーをチラ見して、目的のゾウのコーナーにたどり着いた。(フラミンゴコーナーを横切る時、「クェェェェ!」という鳴き声でものすごい威嚇された。傷ついた。)
ゾウは全部で3頭いた。1頭は同じ場所から動かず、もう1頭は同じ場所をぐるぐるしていた。
なるほどやはり動物園というのはどこも動物のやる気はないのか・・・と思いかけた矢先、そのぼくの考えを払拭するかのように、3頭目のゾウは広場を所狭しと駆け回っていた。
歩き、小走り、後ろ歩き、後ろ小走りS字カーブなどの多彩な歩法を披露してくれたし、小さい水溜りからすくい上げた水をこちらに向かって吹きかけてきた時もあった(それは全力で避けた)。
こんなに活き活きとしたゾウを生で見る事が出来たのは初めてで嬉しくなり、近くにあったベンチに腰掛けぼくは30分ほど微笑みながらゾウを見ていた。
ゾウを見て30オーバーの浮浪者が微笑んでいるという画は少し気持ち悪かったかもしれない。「見て、ママ。あの人、ゾウ見て微笑んでるよ!ガネーシャと勘違いしてるのかもね!かわいそうだね!悲しいね!」雨にも負けず蜚語にも負けず、ゾウを見たおかげで良い実りを得た。
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